とても眠い。寝付きの悪い僕にとってこんな嬉しいことはない。
きっと、いま布団に入ったら、『あっ』という間に、眠りに落ちてしまうだろう。
でも、
だからこそ、まだ、眠りたくない。
眠くて、眠くて仕方ないのだけど、眠りたくない、のだ。
『主戦馬は一線を退いたらお迎えが来るのかも知れない』と、ある人は言った。
『自分の目で見てないから、信じられない。』と、ある人は言った。
僕は、悲しく、ない。不思議と。
なぜだろう。いない、という表現が、これほど現実味を持たないことはない、気がする
ただ、
さびしい。
何か他のものでは、決して埋めようのない、そんなさびしさ、だ。
人は笑うだろうけど、
彼は僕にとって、18の時から、友達だった。
僕の話を、いちばん聞いていたかもしれない。
命は、あるとき、ふっ、と、消えてしまう。
昼まで元気だった馬が、腸捻転で夜には死んでしまう…
誰にも、どうすることも、できない
綺麗に掃除された馬房に、線香をあげて祈るだけ
もう一目だけ、逢いたい。
さびしくなるよ。
悲しいよ。