【読書感想文】 藤村 忠寿 / けもの道



『水曜どうでしょう』でお馴染み藤やんこと藤村 忠寿さんが初めて書いた著作、『けもの道』。

書名はすなわち人と同じことをすることを良しとせず、人が通ったことのない道を行くことを好む藤村さんの考え方を表しているようで、それはただ「これまでに人が通ったことがない」というだけでなく、「獣であれば通れるわけだから通れないわけではない」「通った後から消えていくけもの道だから道そのものを後に残すことは出来ない」ということも表しているらしい。うん、藤やんらしいと思うし、自分の通ってきた道が、

  • 誰でも通れる道なのか
  • 今でも通れる道なのか

は全く解らないもんね。

本書はそんな藤やん節がぎゅぎゅっと一冊に収められたもの。感じとしてはエッセイでもあり半生記でもあり生き方の提示でもあるのだけど、ニュアンスとしては確かに酒を飲みながら藤やんの話をふんふんふん…と聞いている感じ。こちらから言い返すことは出来ないけれど、なぜかそれを踏まえた返答が次の文章に書かれていて、本当に会話しているような気になるから不思議。多分彼にはそういう先を読む才能のようなものがあるんじゃないかと少し思ったり。



語られていることはイベントや講演、DVD副音声などで語られてきたことをなぞっているのだけど、藤やんがどんな子供だったかとか、社会や会社で求められていることに対して自分なりにどう応じてきたかとか、『水曜どうでしょう』を創るに当たって何を目指し何を諦めたかとか(諦めたこと…ゴールデンタイムで20%越えとか)そういうことも書かれていてとても面白いです。

本書を読むに当たっては多分、DVD副音声で語っていること(「テレビとは」「仕事とは」など)を知っていた方が楽しめると思うけど、それを知らなくてもわかるかな。藤やんはとても合理的でかつロマンティック。初見でなんとなく「普通じゃないな」「彼だから出来る」と思いがちなのだけど、それは「合理的」なところしか見ていない感想。そうではなく、自分のロマンティックな目的を現実として実現させるために、最大限の努力を行っている(=合理的)と考えると全体が素直に飲み込めると思います。

彼の歩く道は「けもの道」だから、彼のようになりたいと思うこと自体がピントずれているのだと思うけど…、それでも結果として自分が手にしたいもののために最大の努力をする生き方をしたいと改めて思ったのでした。


…ていうかあれだね、藤やんと飲みたいよね(笑)

この本を読んで改めてそう思ったのでした。