【読書感想文】 今井 恭司 / 写蹴 – ファインダー越しに見た歴代サッカー日本代表の素顔


日本サッカーの最初期からカメラマンとして活躍してきた今井さんによる写真集。

僕らにとっての「日本サッカー」は既に「Jリーグ」によって上書きされてしまっているけれど、
今井さんの写真が見せてくれる1970年代、1980年代の日本サッカーを見ると、
むしろ今の状態が信じられないという気持ちになります。

アジアで敵となるのはもはや数カ国しかおらず、W杯に出るのも普通となった現代と、
海外の大会に帯同するカメラマンが今井さん一人きりで同じ釜の飯を食っているような、
W杯はおろかオリンピックでさえ出場が夢だった時代とが、連続して続いているなんてとても信じられない。
凄いなぁ。



写真集には、試合のピンナップももちろん多数収められているのだけど、
それよりもやはり試合以外の時間における選手の表情がもの凄く印象的で、
僕自身に想い出があるわけでもないのに、もの凄く懐かしい気分になるような。
子供のように笑う釜本さんとか、精悍な与那城 ジョージさんの横顔とか。
幼さの残るカズとか、イケメンなセルジオ越後さんとか。

しかもそれらの写真が、
「選手との間に一定のラインを設けて踏み込みすぎない」
というスタンスで取られた、というのがもの凄く興味深い。

ドキュメント写真を撮る人の中には、対象の人物と人生を共にするほどの距離感で過ごし、
結果、ゼロ距離の素顔を撮影することに成功する人もいて、
僕はそちらの方が普通なのではないかと思っていたのだけど、
意識的に客観を守って撮影された写真であるが故に滲む主観というのがあるんだな、というのを、
理屈ではなくて写真一枚一枚の存在感で納得させられました。

近づきすぎれば、誰でも詳細が見えるわけではないし、
遠く離れれば客観的に見えるわけでもないし…
自分と相手とその関係性の中で動的に決まってくることなのだなぁ。


年代毎の写真と一緒に掲載されているエッセイも非常に面白く、読み応えがあります。

もし書店で見かけたらば、一度手に取ってみてください。