CDとレコードの違い。

インスパイア元はこちら。

音楽はこれまで「レコード」「CD」という媒体に固定されて流通していましたが、最終的に再生するためのハードが別途必要となること、また「放送」によっても流通していたことから、媒体への依存度が低く、結果としてネットでの流通が爆発的に増えました。その点では「インターネットはレコードを殺している」と言えるでしょう。
 

あくまで「レコード」関する言及についてだけなので、記事全体については考えない方向で。
(そういう意味でインスパイア)


で、引用部分において、筆者が「レコード」について勘違いしていることが2つ。

1つ目は、“その点では「インターネットはレコードを殺している」と言える”という箇所。

端的に結論を言えば、インターネットがなかったら日本での「レコード」はもっと早くに絶滅していました。なぜか?日本においてレコードはほぼ100%に近い輸入産業だからです。輸入産業は、輸入する小売店がなければ維持できない。生産者と消費者を結ぶ線は著しく細い。今の小売店が保っているのは、100%インターネットのおかげです。店舗だけで利益を上げているレコードショップ(ないしはレコード部門)があったら、それはかなり希有な存在です。もしインターネットがなかったら、2000年代初期にレコード小売りはほぼ絶滅し、マニアが個人輸入するものになっていたでしょう。


2つ目は、“媒体への依存度が低く”という箇所。

レコードはCDと違ってメディアとしての価値を生むことに成功しています。もちろん、率直に言っていつまで保つか…2010年を迎えられるかも分からない程度のものではありますが、レコードを購入してくれる人が存在する理由はそれ以外にはないでしょう(だってCDでも出てるんだもん)。今後はともかく、今まで生きながらえてきた理由はそれです。雑誌や新聞も含めた紙媒体と比べると、レコードというメディアはかなり大事にされています。いずれ、捨てられる運命にあるとしても。



その上で。

基本的にレコードというのは、もう終わったメディアです。無くなるか無くならないかで言えば無くなりませんが、それが日本の一般家庭に届けられる日はもう来ません。年配の方は音楽と言えばレコードという印象があるのか、音楽の話になると良かれ悪しかれレコードの話を出されますが、もう止めた方がよいと思います。今のレコードは、音楽業界の中の何ものも映し出していません。文化としては立場を保っていても、経済としてはただ、名残を残しているだけの存在なのです。全ての音楽メディアの経済的文脈は、レコードではなくCDで語れば十分ではないでしょうか。




追記。(2009/10/02 22:37)

はてブコメントに返信。

taninen
文脈からして、元記事の「レコード」はCDも含んでいるのではないかと(日本レコード協会が使う「オーディオレコード」の意味)。最初に「レコード」「CD」と併記されているので紛らわしいのだけれども

んーそうですね。確かにそう読めるかもしれません。特にこの部分は、実体のある音楽メディアの総称として「レコード」と呼称しているようにも読めますね。

音楽はこれまで「レコード」「CD」という媒体に固定されて流通していましたが、最終的に再生するためのハードが別途必要となること、また「放送」によっても流通していたことから、媒体への依存度が低く、結果としてネットでの流通が爆発的に増えました。その点では「インターネットはレコードを殺している」と言えるでしょう。

より正確に書くのであれば、最初の部分、

「レコード」「CD」という媒体

この部分の「レコード」は、つまりVinylのことを指していると言えるでしょう。
一方で、

その点では「インターネットはレコードを殺している」と言えるでしょう。

この部分の「レコード」は、Vinylではなく実体を伴う音楽媒体のことを指しているように読めます(つまり、VinylだけではなくカセットもMDも販売されていた音楽媒体は全て含まれるわけですよね)。そういう意味で確かにtaninenさんの言うとおり、Vinylについて何かを書いた文章というわけではないかも知れません。著者が勘違いをしているという書き方は筋違いですね。


ただ…これは以前にも一度別の文章で書いているのですが、音楽媒体として「レコード」という名前を出すこと自体がおかしいのではないかと僕は感じています。

なぜかといえば、日本国内でのリリース量から考えて日本国内ではレコードは既に音楽媒体ではないからです。僕の書いたような状況の差が生まれており、VinylとCDは同じビジネスではないんです。Vinylはもはや音楽を聴くために買い求めるものではなく、Vinylを買いたいから買うものになっています。

このような状況の差があるにも関わらず、音楽媒体を代表するものとして「レコード」という名前を使用することは、適当とは言えないのではないかというのが根本的な僕の意見です(しかも一度書き分けてるのに)。これ、なんで「インターネットはCDを殺す」じゃないんでしょうね?売り上げ低下とか言われてる現状からすると、そっちの方がフィットするんですけれども。



以上を鑑みて、

  1. 「で、引用部分において、筆者が「レコード」について勘違いしていることが2つ。」 → 勘違いではなく、筆者の表現がわかりにくいだけでした。僕の文章はCDとレコードとの違いを記述していると考えてください。
  2. 「その上で」と題した段落、それがそのままこの文章での「レコード」という用語への意見となります。簡単に言うと、レコードという名称で音楽を語られるのは迷惑だから止めて欲しい、ということです。

という感じにこのエントリの方針を修正したいと思います。