【読書感想文】 小泉武夫 / くさいはうまい

くさいはうまいくさいはうまい
小泉 武夫
毎日新聞社 2003-07
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以前読んだ、椎名誠さんの『からいはうまい』の中で、
小泉さんと椎名さんが対談(というか小泉さんの講義?)してらっしゃって、
いずれ読もうと思っていた1冊。ずいぶん遅くなっちゃったけど。



中身は3章に分かれていて、
第1章は、発酵食品全般に関する様々な知識。

普通に口にしている食品(納豆とか)も、
よく考えれば菌の発酵作用でできあがっており、
そういう発酵食品は全世界に(イヌイットまで)あるらしい。すげぇ。

わざわざ発酵食品を作る目的は、タンパク質やビタミンが不足しがちな
土地、季節において、それらを効率よく摂取するため、らしい。
発酵の過程で脂肪などを酵素分解してビタミンとして蓄積する…って、
誰がデザインしたのか知らないけどものすごく良くできたシステムだなぁと思う。驚愕。

ちなみに、和歌山・新宮の『東宝茶屋』のサンマ熟鮨は食べたことがあります。
さすがに30年ものではないけれども、早熟れではなくて普通の熟れ鮨。
夏だったこともあって、夜買って帰って少し食べて、翌朝見たら、
全然別の料理になってました(苦笑)
発酵って凄い。



第2章は、本のタイトルにもなっている「くさいはうまい」。
つまり全世界のくさい食べ物大集合。

本で読んだってわからないよね…というのはあるけれども、
一度読んでみれば『本で良かった』とも感じるはず…
特に、韓国で作られ冠婚葬祭などで振る舞われるという、
『ホンオ・フェ』の下りなんかを読むと、好奇心はあるけどでも遠慮したい…と思うことしきり。
だって、アンモニアが生成されて何%は気絶するとか言われたら、
そんなもん食わなくったっていいよ…


ただまぁそれは特に極端な例であって、
一般的なレベルでのにおいのある食品は僕はあんまり苦にしませんね。
生臭いのも、肉臭いのも全然大丈夫だし。
食べられないものは全くないし。
(この本ではこのセリフは無意味なのだけど。未知に出会いすぎてw)

この本の凄いところは、ただ珍しいものやゲテモノを紹介して、
うわーこんなの食べてるんですねー酷いですねーじゃなくて。
それが実際にどんな味・臭いで、どんな風に作られどんな風に食べられていて、
なぜそれを作るようになって、どんな良いことがあって…
と言うのを小泉先生自身が実際に体験して細かく書かれているところ。
本当に凄い。

小泉先生の軽妙なタッチで書かれると、
うーん、食べてみても良いかもとか思っちゃうもんなぁ。


あ、そういえば、カラスの肉が臭いってのはちょっと残念だった。
せめて美味かったらもう少し減らせるかもしれないのになぁ。
雑食、肉食は美味くないってことなのね。



最後の第3章は、哲学者・中村雄二郎先生との対談。

若干議論がかみ合ってないかなーという印象はありつつも、
(ベースにしてる学問が違いすぎるので)
双方が、外部からのインプットを自らの中で解釈して、
つまり『発酵させて』アウトプットされる人なので、
話が載ってくると存外面白い。

今調べたら中村先生ってなんか凄い人のようですね…
門外漢故に全然知らなかったのだけど。

哲学者・中村雄二郎の仕事 – 感じない男ブログ
特異な能力の人で、あるとき研究会に来て、発表がはじまったらいきなりガーっと寝始めて、発表が終わった頃に起きて、質疑応答のときに最初に的確な質問をするという場面を目撃したことがある。

うーむ。凄い。




全体を通してみると、やっぱり小泉先生の語りかけるような調子が良いんですね。
でもって、書かれていることもただ雑学なだけじゃない、
目鱗なことがいっぱい書かれていて、凄い面白い。

他の著作も読んでみたいと思います。