【読書】 Number 671: 『イビチャ・オシム×杉山茂樹』が秀逸

現在、店頭に並んでるNumberの一個前の号なんですけど。
日本代表監督、イビチャ・オシムのインタビューが載ってました。

前任者、ジーコが比較的マスコミと距離を取っていたのに対して、
オシムの方は、距離を取るでもなく、取り込むでもなく、
ほどよい距離を取って接してるなぁという感じがあって、
インタビューや特集記事や、その他細かな発言に至るまで
比較的よく目にします。
でも、このインタビューはそれらを超越した味があるんですね。

もちろん、オシム自身、
明確なビジョンと多くの言葉を持ち合わせているというのもあるんですけれども、
このインタビューに関して言えば、
やはり、インタビュアーである杉山茂樹が良いんだと思うんです。


僕はよく、インタビュー記事に反応するんですけれども。

インタビューってのは、
必ずしもその対象が良ければ良いものが出来る…ということではないんですよね。
インタビュアーの知識や、考え方も影響するし、
それ以上に、どう話をしていくか、という点で差が出る。

例えばよくある、『話を伺う』という方式だと、
結局紋切り型の回答しか得られない、メールインタビューみたいな感じになります。
内容が面白ければ読めるけど、そこに空気感のようなものはない。

逆に『話をさせる』方式のインタビューもよく見ます。
インタビュアーが書きたい内容が既にあって、とにかくそれを言わせたい、というような。
結果、その内容が、対象と共有できていればそれで良いんですが、
もし共有できていないことが明らかになり、それを認めようとしない場合、
既にそこにはインタビューである必要性はなくて、非常な苦々しさが残るだけになります。

打開策は、つまり相手の発言にリアクションを取ると言うことなんですが、
── つまり前者なら、相手の回答から組み立てた質問もする、
後者なら、自分の考えを修正する…など──
これがなかなかシンプルなのに、難しい。
経験と技量と人柄が必要みたいですね。


この、オシムに対する杉山茂樹のインタビューは、
決して受け身になりすぎず、
相手の考えを確認し、切り返すような姿勢が多い。
しかも、杉山茂樹には、豊富な知識に加えて考察があり、
それも、実際に自分がヨーロッパその他で蓄えてきた今のサッカーであり、
さらには戦術盤を用意して、戦術論を促すなど、きめ細かい。

なかなか出来ないよなーと思うのね。

もしかしたら杉山茂樹のよく取る手なのかもしれないけど、
少なくともNumberでこういうインタビューはあまりない。



良いインタビューは、その対象と、インタビュアーと、
両方の人間性が透けて見えて、
その文章の中で、何かが立ち上がってくる、そんなイメージを受ける。


なかなか難しいんですけどね。

ヒトと普通に会話することだって、
簡単じゃないもんね。