箱もの施設と有能な現場責任者の組み合わせ

サービスエリア・道の駅のイラスト
先日から話題になっていた栃木県佐野サービスエリア上り線でのストライキ。その詳しい事情が文藝春秋に掲載されたんですが、これがとてもわかりやすい記事で。あくまで従業員側からの記事でしかないので、完全に事実であるかと言われるとわからない部分もありますが、読んだ限りでは「きっとこういうことだったんだろうな」と思わされる内容になっています。文藝春秋編集部GJ。


ストライキの端緒となったのは加藤正樹元総務部長(45)の不当解雇だ。加藤氏がケイセイ・フーズに入社したのは昨年5月。元々は大手総合商社で働いていたが、東日本大震災をきっかけに故郷である宮城に戻り復興活動に従事していた。そんな折、ケイセイ・フーズで働く知人から誘われ、同社に入社したのだ。「加藤さんは入社して間もないが、従業員の信頼は厚い」と語るのは加藤氏と共闘する同社支配人A氏だ。

「加藤さんは着任早々、様々な取り組みをしてきました。例えば北関東限定販売の、葵の家紋がデザインされたコカ・コーラの“徳川ボトル”。以前は冷蔵庫で冷やして売っていたのですが、加藤さんがお土産にちょうどいいからと、大きな売り場を作って、箱単位でも売り出したんです。それが当たり、地域限定ボトルの売り上げで佐野サービスエリアが全国1位を獲った。メーカーさんも驚いていました」(A氏)

《いまだ断行中》「なぜ私は佐野SAストライキを始めたのか」渦中の“解雇部長”が真相を告発 | 文春オンライン



箱もの隣接のショップにやる気なんかない

この記事を読んで真っ先に思い出したのは、僕が2年前まで手伝っていた斎場のフードコートのことでした。

僕が手伝うことになった斎場のフードコートは夜の仕事である居酒屋の関連事業として始まったものでした。住宅地から遠く離れた施設における独占的な立場であることもあり、(詳しい金額は書けませんが)かなり高額な家賃が設定されていましたが、それでも十分に利益が出るほどの事業でした。こういうところに入り込めるとこんなに美味しいのか、とちょっと驚いた記憶があります。

ただそこは「現場第一主義」のうちの社長のことですから、「来る客に適当に食べるもの出してれば良い」とはなりません。長年飲食業に携わってきたプロとしてより良いものを提供したい(そしてもちろん利益を出したい)という気概で運営していて、メニューを改善したり値段を安く抑えたりいろいろやってました。おかげで最も重要なお客様であるタクシードライバーの皆さんにも好評で事業は今でも順調に続いているようです。

(うちの社長のことなので従業員はしんどい思いしてるらしいですけど)



そんな今のフードコートは良い感じなのですが、社長が始める前に契約していた業者はもうちょっと残念な感じだったようです。放って置いても客は向こうから来るし、施設内に他の売店はないし、どんな値段で何を売ってもどんどん売れる。社長はほとんど「相続したマンションのオーナー」みたいな感じで、不労所得を元に葬儀会社の若手男性社員を見繕って遊ぶみたいな。残念だけど箱物のショップって、よほどやる気に満ちた人が責任者にならない限り、そんなもんですよね。オーナーや経営者と縁の深い人が適当なポジションにいて、お金の管理は曖昧で、それでも儲かるから何も変わらない。変える必要もないですしね。取引業者にたいして高圧的にもなるでしょう。


佐野サービスエリアの「加藤さん着任前」もそんな感じだったんじゃないかなあ。



残念だと思うのは

佐野サービスエリアを運営していた会社の親会社が経営難だということですけど、その岸社長にとってこのサービスエリアは挽回のチャンスだったと思うんですよ。佐野サービスエリアを成功させ、それを足がかりに他のサービスエリアや飲食業に参入し、建設業からの事業転換を図って……みたいなことだって考えられたと思うんですけど、残念ながらそれを十分に生かせなかった。加藤さんを着任させた点で岸社長または近しい幹部に見る目がある人がいたんだろうとは思うんですが(たまたまっていう可能性もあるけどさ)、もうちょっと我慢出来なかったのか。銀行だって親会社の事業には金を出せなくても、ケイセイ・フーズには出せたんじゃないかなあ……まあコンプライアンスが怪しそうなんでわからんけど。


色んな意味で、これ以上キズが広がる前に事態を穏便に収めて早く事業再開した方が、結局は岸社長のためになると思うんですけど、そうはいかないんだろうなあ。会社が潰れて、事業から手を引いてみんな解散みたいになるのかな。もし事業継続出来なかった場合は入札ってことになるんだろうけど、これで加藤さんが独立して設立した会社が受けるみたいなことになると利用者的には一番良い結末かもな。難しいだろうけど。