クリエイティブな仕事に対する誤解

同居人のイベントのフライヤーを引き受けて作業してるんですけど、久々に心の底から怒ってしまって、まあそういう仕事に理解のない人(例えば事務畑歩んできたおっさんとか)はそんなもんだろうなと思いつつかなり脱力。多分に「あるある」でありいまさら書くほどのことでもないんですけど、何かを作る仕事というのは、それをよく知らない人から見るとものすごい「簡単な仕事」に見えるらしいんですよね。「やりたいこと」と「完成品」を直線で結んで、「簡単でしょ?」とか平気で言う。

その間に幾多の試行錯誤があり、どれだけの没アイディアがあり、「やりたいこと」と「完成品」との間に存在する入り組んだ、見ようによっては行ったり来たりの道程があったなんてことは、想像できないらしい。いやね、別に「作業をよく知ってくれ」「苦労を解ってくれ」なんて言うつもりはないんですよ。例えば僕だって電気工事の人たちの作業の内容はよく知らないし、「停電します」って言われたら「早く終わらないかなあ」しか考えませんからね。だけど、基本的な人間的な感性として「簡単でしょ?」というようなことは言ってはいけないことは知っています。「この電線を切ってこの電線を繋ぐだけでしょ?簡単じゃん。5分で終わらないの?」そんなことは言わない。僕はエンジニアでもあるから、その間に多くの確認事項と、ミスを犯さないための必要な作業手順とがあることをよく解っているし、そのために作業員の方達が細心の注意を払い、結果時間が掛かることもよく解ってる。

で、そういうことをきちんと想像できるかどうかは、ある程度人として大事なことなんだろうなーとも思ってます。仕事をしている人に対する敬意というか。技術だなんだに対する知識がなくても、「ありがとうございました」「ご苦労様でした」と頭を下げるおばあちゃんにはその敬意がありました。「簡単だろ?早くしろよ」と急かすだけのおっさんにはその敬意がない。大事なことは仕事の内容を知っていることではなくて、相手に敬意を払うことを知っているかどうか。おばあちゃんにくらべておっさんは、人としての価値が低い。お客様ではあるから相手は何も言わないかも知れないけれど。

デザイナーであれ、プログラマであれ、イラストレーターであれ、同じような顧客からの冷たい言葉や態度は、まあ至る所に転がっている話ではある。もちろん、そういうことをきちんと理解してくれる顧客だっているし、理解した上で厳しい要求をしてくれる人はとても大事。そういう人とは良い仕事が出来るし、仕事のクオリティ以外でトラブルは起きにくい。一方で理解してなくて「そんなの適当にぱぱっと並べれば終わりじゃん」とか言い出す人は顧客ですらない。仕事のクオリティとは関係ない部分でもトラブルが起きるし、実際にいっぱいいるんだけど、なるべく一緒に仕事したくない。簡単なら自分でやれば?


デザイナーの仕事に対する見方がこうなるのも、すごくよく解ります。


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(出典:練乳さん


難しいかも知れないけれど、もっと、クリエイティブな仕事に対して理解を持って欲しい。そういう仕事は思っている以上に身の回りにたくさんあるものだし、「敬意がない」と指摘されたと言うことは、これまでそういうことに対して敬意をもって接してこなかったという意味。解らない人は、山にでも登ってみたらいいんじゃないかなあ。見えてる頂きが近いとは限らないってのを、体に刻んだ方が良いんじゃないか。