「ありがとう」が変わるとき

「ありがとう」っていうと何かしてもらったときに言う感謝のセリフですが、まあね、日常生きてるとなかなか口に出しませんね。接客業の人は業務で習慣として口に出すと思いますが、まあなんというか、そうじゃなくてね。プライベートであんまり口に出さなくないですか。それが美徳とされていることからも解りますけど、大事なことではあるけれど意識しないと口に出さないからこそ美徳とされているんじゃないかと。

そんな「ありがとう」について、僕個人ではいままでに2回、「あ、変わったな」と思った瞬間があります。「ありがとう」という文言はそのままなんですが、その言葉を言うときの心境が変わった瞬間です。別にもったいぶる必要も無いので並べて書いてしまうと、

  • 自分がDJイベントを始めて、お客さんが来てくれるようになったとき
  • 同人即売会のことを知り、実際に一般参加として参加したとき

という2回です。



最初のDJイベントの方はより直接的です。実際に、感謝の気持ちを持って「ありがとう」と頭を下げられるようになったのって、DJイベントのおかげだと思うんですよね。それまでも接客業のバイトはしていましたけど、バイトって所詮は仕事じゃないですか。しなくてはいけないからするんであって、感謝の気持ちなんか無くたって口にはするわけです。コンビニレジからの「ありがとうございましたー」とか。

でもDJイベントの方はそうじゃ無いんですよね。僕らは別に有名なDJってわけじゃない。どこかで絶賛されてるわけでもないし、豪華なゲストが来てるわけでもなければ、有名な箱でやってるわけでもない。入場料は無料じゃない。そういう状況の中でそれでも来てくれているお客さんに対して、ありがたい、と思わないわけが無いじゃないですか。それが友達であっても、そうじゃなくても。もうね、出来れば全員とハグしたいくらいの気持ちですよ。100人とかさすがに無理なんでしませんでしたけど。

「ありがとう」なんて、ただ声に出して言えば良いだけの言葉に過ぎないんですけど、僕にとってはこのときに「ありがとう」という言葉に対する心理的な障壁が1つ取り除かれたような気がします。



2つ目の方はごく最近のことですね。同人即売会での話。

よく「同人即売会にお客はいない」ということを言います。創作物を準備して販売する人、それを購入する人、イベントを運営する人、そういう人全員が参加者であり、イベントを支えるメンバーであるということですね。

販売している人はそれで対価を得ていることもあって、創作物の受け渡しの際に「ありがとうございます」といってくれます。それに対して購入者である僕たちはなんと返すのが正しいのか?黙って受け取る?「いえいえ、どういたしまして」?僕の答えはそうではなくて「ありがとう」でした。

創作は出来ないが支持することは出来る、特に「僕のために」ということではないでしょうけれど、ともかく創作してくれて「ありがとう」。おかげで僕は幸せになることが出来ます。お互いに果たす役割は違えど、持っている気持ちは同じなわけで……そんなあなたの活動にありがとう。きっとそれが正しい返答なんだろうと思い、また実際に口に出してみて一番自分でしっくりきたのでした。



ありがとう。

なかなか口に出して言えないですけどね。
大事なことだと思います。
きっと誰にもそれを口にする、もしくは口にすることが出来るようになる瞬間が、あるんだと思います。