「ネガティブ・スプリット」

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マラソンの世界に「ネガティブ・スプリット」という概念があります。


悲観的な考えを持って走る……ということではなくて、前半よりも後半のタイムの方が早いことをそう呼びます。一般的に「ネガティブ・スプリット」の方が良いタイムが出やすいと言われていて、シカゴマラソンで日本最高記録を出した大迫傑選手の記録も、前半抑えられたタイムが後半一気に上がる「ネガティブ・スプリット」で達成されました。



エネルギーの貯金は出来るけれど、タイムの貯金は出来ない

生理学的な理屈についてはよくわかりませんが、実感としてはよくわかります。小出義雄先生はこれについて「エネルギーの貯金は出来るけれど、タイムの貯金は出来ない」と著書の中で書かれていました。すなわち、前半にタイムを稼いでいこうと飛ばしても、後半のペースダウンで貯金したはずのタイムを簡単に吐き出してしまうということです。人間が持っている総エネルギーと速度ごとの燃費を考えると、どう走っても最後には帳尻合うんじゃないのと思うんですが、でもそうですね。去年の僕も典型的な30kmでスローダウン状態でしたし。


ただまあ、大迫選手のようなトップランナーやサブ3、サブ3.5のランナーと同じように出来るかというと、まあ正直難しいですよね。こちらのブログでも書かれていますが、


ネガティブスプリットとは?サブ4を目指すときの導入方法

サブ4やサブ5を目指すランナーの場合、トップランナーとは違い脚力がありません。フルマラソンを走った場合、間違いなく35km過ぎからは苦しくなって脚ももたなくなります。

30km付近まで体力を温存しても、そこからペースアップを図る「脚力」がないので、結果ポジティブスプリットよりもタイムが遅くなる確率が高くなってしまいます。

(中略)

おそらくランナーの誰もが経験していることだと思いますが、日によって楽に走れるペースに違いがあると思いませんか?

軽く走っているつもりなのに自己ベストに近いペースで走れている日もあれば、頑張っても全然ペースが上がらない日がありませんか?



確かに30km過ぎて脚が残っているだろうかという不安はあります。そして確かに日によって楽に走れるペースは違います。走り始めてめっちゃしんどくて6分/kmを越えてしまうときもあれば、気が付いたら5分20秒/kmだったなんてこともあります。単純にコンディションの問題なんだろうとは思うんですけど、それが今日どうなのかは走り出してみないとわからないです。そのことで「ヤバい今日は調子悪い」と焦ることもよくあったのですが、そうか、それでいいんですね。その日なりの調子で前半を走って、ハーフ過ぎた辺りから徐々にペースを上げていけばOKだと。

実際、13kmまで6分/kmで走ったあと徐々にペースを上げて最終的に3時間39分だったなんていう話を聞くと、前半のペースを抑えることへの勇気が湧きます。前半のペースを抑えることは、それはそれでこのままこのペースで疲れてしまったらどうしようという怖さもあるので。



そうか、だから早いペースの練習も必要なんだ

ネガティブ・スプリットを意識して前半遅く入るためには、後半のペースを上げたときの早いペースでも走れるようになっておかないといけないですよね。そしてそれは当然、想定する平均ペースより早いはずです。先ほどのブログでは「前半ゆっくり入って、20~35kmの間に5分15秒/kmまで」と書かれていましたが、5分15秒/kmで走り続けるためにはそれ相応の心肺能力と脚力が必要です。少なくともそのペースで走る練習をしておかないといけない。

だからサブ4を狙ってサブ4のペース(5分40秒/km)で走り続けるだけではダメで、スピードトレとしてWSやTTを導入したり、ビルドアップ走やロング走の最後を全力疾走にする必要があるんですね。今まで早いペースの練習(WSやTTなど)は単に1つ上のランクのペース練習だとしか考えていなかったんですけど、そうではなく、平均5分40秒/kmのレースでも5分15秒/kmが必要になる時があると。なるほどそういうことだったのか……そういえば一昨年はスピードトレなんか全くしていなかったので、体力を残しておいた後半、思ったよりペースを上げられていませんでした。平均6分37秒/kmのところ、ラスト2.5kmで一番飛ばしたところでさえ6分4秒/km。道中一番早かったスプリットでも5分42秒/kmでした。

何ごとも準備が重要ってことだなあ。



楽しんで走りきるために

マラソンてほんとメンタルのスポーツなんですよね。もちろん基礎的な脚力・体力があることは前提なんですけど、持っている力をどれくらい出せるかという点において、メンタル次第で0にも100にもなるっていう。だからこそ沿道の声援は有り難いし、練習よりレースの方がいい記録が出たりするんですけど、ネガティブ・スプリットもそういうところありますよね。25km、30kmを過ぎて体力的に余裕があったときの気楽さ加減と言ったらないですもん。今年の京都マラソンは失敗でしたけど、去年の京都マラソンは前半極端に抑えて入ったので、35km以降すごい楽しかった記憶があります。良い記録が出る時ってのはそういうときなんだろうな。

今年は自分に合った、記録の作り方みたいなものをつかめたら良いなあと思っています。とにかく、最初から最後まで楽しんで走れるようにしたいですね。後半失速すると、楽しむどころじゃなくなっちゃうからなあ。