このところ何冊か野球の歴史とかプロ野球の歴史とかについて興味を持って読んできました。

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何かエピソードを拾うと言うよりも、時系列に沿って整理してまとめていくような歴史的、学問的な書籍に偏っていたのですが、この二宮清純さんの「プロ野球「衝撃の昭和史」」という名前は付いているものの歴史的な資料というよりは、過去にこんな知られざるエピソードがあったんだよと紹介するような、ノンフィクション・ドキュメンタリもの。まえがきによると文藝春秋での連載タイトルは「プロ野球 伝説の検証」で、書籍化に当たって改題したとのことなのだけど、本書の内容を考えると、「昭和史」とするよりかは「伝説の検証」としておいた方がしっくり来かもしれません。



本書に収められている「伝説」は次のとおり。


  1. 江夏の二十一球は十四球のはずだった
  2. 沢村栄治、戦場に消えた巨人への恩讐
  3. 天覧試合、広岡が演出した長嶋の本塁打
  4. 初めて明かされる「大杉のホームランの真相」
  5. 江川の投じた最速の一球
  6. 宿敵阪急を破った野村野球の原点
  7. 遺恨試合オリオンズvs.ライオンズ、カネやん大乱闘の仕掛け人
  8. 落合博満に打撃の師匠がいた
  9. ジャイアント馬場は好投手だった
  10. 打倒王貞治「背面投げ」の誕生
  11. 三連勝四連敗、近鉄加藤「巨人はロッテより弱い」発言の真相
  12. 「清原バット投げ事件」の伏線


プロ野球ファンであれば、それも古いファンであれば、どれも見出しだけで心動く話なのですが、それに違わぬ内容でとても楽しめました。例えば……第2章「沢村栄治、戦場に消えた巨人への恩讐」とか。

沢村栄治と言えば今でこそプロ野球の伝説の好投手、偉人と言われ、シーズン最高の活躍をした投手に送られる「沢村賞」賭しても名前を残している存在なのですが、その現役最後は巨人からの非常な戦力外通告だった、なんて知りませんでした。もちろん巨人が特別に悪いと言うことではなく、3度も応召されその中で肩を壊し野球の出来ないからだになり失意のまま向かった3度目の戦場で命を落とす……「伝説の投手である」と言うことだけしか知らなかったので、絶頂のまま戦争を迎え、絶頂のまま応召され死んでいったのだろう……と思っていたのですが、事実はそんなに美しいものでは無くもっと悲惨でした。もし、3度目も生還することが出来たとしたら今のような「伝説」になっていたかどうか。正直複雑に思いますし、沢村栄治の遺族の方の心情も少し理解できます。



また第9章「ジャイアント馬場は好投手だった」もなかなか。ジャイアント馬場といえば知らぬもののない伝説のプロレスラーなわけですが、元プロ野球選手だったと言うことは知っていても、プロレスで名を残したと言うことを考えて、「ああ、野球の才能はなかったけれど、プロレスに入って才能が開花したんだな」と思っていました。違った。全然違った。確かにV9の巨人の投手陣に割り込めるような、超一流の投手ではなかったかも知れないけれども、他球団であれば十分にエース格として活躍できる実力があり、実際に巨人を退団後テストを受けて他球団への入団が決まっていたというのだから……なんとも僕の思い込み。

その「馬場正平」青年がプロ野球を諦めなくてはならないエピソードは不運で悲しいのですけど、それでもそのことがあってのプロレスの盛り上がりがあったと言うことを考えると巡り合わせというのは不思議なもんだなあと思います。夢が潰え挫折したように見えても、それで終わりかどうかは終わるまでわからないというね。



時代を追うという意味ではネタを拾うというかんじもあり、全体的に飛び飛びな印象も受けますが、1つ1つのネタに「考古学」のような新しさがあってとても面白いです。余暇の読みものとして読むにはとても良いんじゃないかなあ。プロ野球が好きな方にオススメです。



……それにしてもそろそろこの「野球史」関連の書籍を広く「横掘り」し始めてしまいそうでちょっと怖いです。

面白いから仕方ないんですけどねー