ネットビジネスの終わり (Voice select)ネットビジネスの終わり (Voice select)

PHP研究所 2009-10-22
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切込隊長こと山本一郎氏の新刊。

タイトルから見てもの凄く辛辣でネガティブな内容ではないかと思って、2,3日買うかどうか考えたのだけど、前書も面白かったし、恐らくその続きにあたるような流れであろうし、気になって仕方がなかったので購入して読んでみた。余談だけど、深夜に迷ったときAmazonがあって良かったと思う。無かったらこんなに散財しなくて済むのに。なんてことだ。
本書は、前書「情報革命バブルの崩壊」に続いてネットビジネスの現在と近未来に焦点を当てている。タイトルは「ネットビジネスの終わり」だが、本編を通してみた限りではそれはほぼ釣りタイトルであって、“ネットでビジネスが出来なくなる”と言うことでは無しに、ネットを使えば儲かるという意味あいでの商材としてのビジネス利用はもう終わった、というような話かと。現実でダメでも「Webなら、Webなら何とかしてくれる…」と言う都合のいい話はなくて、だいぶプレイヤーが揃いまくってWeb自体の先進性もなくなった今は、結局元通り現実的なビジネスやってかなあかんのちゃうの、っていう感じ。まぁそうですよね。。


仕事柄か隊長は、バズ・マーケティングのような煽って幻想の価値を作り出してそれを担保に一儲けみたいな事例に神経質な感じがするのだけど、実際にそんな話はいっぱいあって、例えばこれくらいへぼい話だとみんなが「ああ詐欺だよね(笑)」ってなるけど、

全国消費生活情報ネットワーク・システム(PIO-NET)に寄せられた相談は、2007年度に181件だったのが、2008年度には379件と倍増。さらに2009年度は9月末までの上期だけで356件と、前年同期の100件から3.5倍に急増した。

 主な相談事例としては、Webサイトに広告を載せ、その商品が売れれば紹介料が振り込まれるとして、約40万円でアフィリエイト目的のサイト作成を依頼したが、全く収入にならない事例や、「1カ月の利益は30万円ほどになる」と説明されてドロップシッピングのサイト作成費用など約135万円支払ったが、半年以上たっても利益が合計1万円にもならず、業者のサポートもまともに提供されない事例などを紹介している。
 

これが「上場しました。初値で凄い値段付きました」「ユーザー増えまくってます」「うちのサービスPVこれだけあります」とかだと、「へー」でみんなスルーしちゃうんだけど、まぁなんと言うかこういうのもその「凄いこと」が売り上げ作ってるんじゃなくて、その「凄いこと」を餌に投資とか広告出稿とか釣ってるって言う話で、まぁ、なんというかネットビジネスだなぁと思う次第。Twitterだって景気のいい話ばっかり聞くけど、あれ、儲かってないよ。ニコニコ動画だってその辺は同じだよねぇ。黒字じゃなくても存続できるって事は、赤字だけどもうすぐ黒字を言い続けることで入る金があるってことだからねぇ。



まぁ僕の「ぼくがかんがえたネットのはなし」みたいのはどうでもいいんだけど、隊長の本。


自分で色々考えてたつもりだったけど全然甘かった。例えば新聞のビジネスとか。日本でやろうとしてること、試みてることはみんなアメリカで既に失敗したことなのね。何で今さら有料化?とかずっと思ってたんだけど、

米週刊紙ニューヨーク・オブザーバー(電子版)は15日、ニューヨーク・タイムズ紙が、電子版有料化などの検討を始めており、6月末までに結論を出す方向だと報じた。タイムズのケラー編集主幹が13日の社内会議で説明したという。

 オブザーバーによると、有料化と、上限を設けて一定程度の文字数やページ数までを無料とする方法の二つが検討されている。朝刊紙のタイムズの電子版は無料で、記事内容は前日の夜にインターネットで読むことができる。(共同)
 

何となく合点がいった。一周回っちゃったあとのこれなわけね。「そんなの当たり前やん」と言えた人は多分わかってない。一周回って同じ位置、じゃなくて螺旋の一段下なんだよね。現状どうあるかは似たような感じでも、この先をどう考えるかは全然違うの。日本だと新聞単体での黒字とかとっくに諦めちゃって、朝日も毎日も「不動産業で儲けて新聞刷る」みたいな感じに見えるけどこれだとどこまで持つんだろうか。



率直に言って徹頭徹尾厳しい内容で、お前らもう希望なんか無いから死ね、と言われてるような気すらするんだけど、なんでかなぁ。読む前より読んだ後の方が、未来があるような気がするから不思議。どこをどう読んだらそうなんのかよく分からないけど、個人的にはここ最近の社会の話(特に政治の話)で、このままアホみたいな事やってたらホントに滅びる、何かしないといけない、でも俺に何できんのよ?みたいな焦りがあって、考えることも多かったんだけど、こうしてネガティブなことをネガティブだと認めていって残っていくものは何かを見極める作業ってのがまず第一で、そうしたら残ったもので何とかやってくっていう発想になれるよなとか。いしいひさいちが漫画の中で描いていた「少子化」の話、ここに載せられないけど、それに通じるものがあるかな。




どちらかというとビジネス書というよりかは、イデオロギー的な話にページが多く割かれているので、ビジネス指南書みたいな感じで読むと肩すかしを食らうと思うのでオススメできない(書かれている事実や情報は確かに重要で興味深いけれども)。

ただそれ以上に「事実のとらえ方」みたいな部分が大事で、それ以外の事実関係の話は言ってみれば添え物。そんなのブログで良いじゃんという感じもあるけど、ブログでは書けないような文字数を多く使って構築するような部分もあり(やっぱりエントリの量や内容はその器に左右されるのよ)、これは本でしか出せないねと納得した次第。

最近なんかちょっと違うよな、と思い始めた人は、一度手にとって読んでみると良いと思う。その違和感が何かを考えるヒントがこの本で見つけられる…はず。