和服業界のジレンマ。

京都と言えば和服、みたいなところがありますが。

こういう事書くと本気で一生懸命やってる人にはマジギレされるかもしれませんが、
和服業界というのもレコード業界と同じように、衰退していく業界ですよね。
(この場合の『和服』は、着物、浴衣、割烹着など和装全般という感じの意味合い)

というかむしろそれが現実で、マジギレする人がいたとしても、
それはそういう現実を把握しているからこそしている努力なわけで、
それに対してはすべき努力だし、諦める必要はないと思っているのですが、

でも、現実は現実です。


特定の職種の日本人を除けば、
日本人が和服を『仮装』以外の視点で捉えるような時代はもう来ません。
和服は今や特殊なファッションであって普段着ではなく、
贅沢品(または使い捨て)であって日用品ではないからです。
レコードとまんま同じです。


僕の友人に関連業界の跡取り息子がいて、日々発展や売り込みに頑張っているのですが、
彼と話しているとそうした業界全体のジレンマのようなモノを感じます。


多分僕みたいな部外者に改めて言われるまでもなく、
和服の存在が小さくなっているのは財布見ればわかることなんだと思いますが、
一方で、『仮装』としては年々存在感を増している気がします。
特に今年は昨年に比べて、祭も花火もないのに普通に浴衣で歩くカップルを見かけましたし、
キャンペーン分を差し引いたとしても随分と『浴衣を着ること』が特別ではなくなっているなぁと。

そういう動きの中で極めて直接的な要因となったのは、着ている年齢層から考えると、
やはり格安の浴衣の流通量の増加かなと。
しっかりしたものはやはりそれなりの値段がしますが、
安いものなら3000円とかでも買えます。
とりあえずこの夏着れればいいと言うようなまさに消耗品的な考え方から言えば、
ちょうどぴったりの価格帯かと。

ただこういう商品というのは決して和服業界から出ているわけではなくて、
どこかの安売りアパレルなんかが仕掛けていることが多いわけで。
デザインや色、仕立てなどもお世辞には良いとは言えません…が、まぁでも多分売れてる。
業界もそれを知ってます。



で、そこでジレンマが生じるわけです。



本音を言えば、ユーザーにはしっかりとしたものを買ってもらいたい。


もちろん売り上げ、利益も大きな要因でしょうがそれ以上に、
自分たちが作ったものを認めてもらいたいという欲求があるように感じられます。
職人の誇りとして悪いものは提供できない、という。

もちろん、その路線だけでは客が付かないことも十分わかっています。
だから妥協点としては、比較的入りやすいところから入ってもらって、
そのあと良いものの方へ誘導できれば…という感じでしょう。
でも、きっと業界にとっては、浴衣というものの存在自体が妥協点だとは思うんですが、
残念ながら…よほど酔狂な人でない限り、浴衣から入って和服は買いません。
(作務衣とかなら楽そうだなーと思ったりしますけどね)

んじゃ、本家本元として納得してもらえるような安価路線の品も用意して、
良品への導線ではなくてその路線単体で利益を生むようにしていくか?と考えると、
やっぱり低価格帯の商品は、コストを切り詰めなければ作れない。
職人による織りとか絶対不可能だし、生地も大したものは使えない。
それを我々の作品だと言って出せるかというと…まぁ、無理ですよね。


結局のところ、商品の販売に繋がるかどうかはわからないけれども、
地道なPR活動を積み上げていくしかないわけで、
それは多分各企業の体力との勝負になるわけで。
質に妥協するわけにはいかないけど、会社を潰すわけにもいかない…
そういう理念のジレンマみたいなのがあるのかなぁと。


活動が実を結んで、何か良い転換点が訪れればいいのですが。

応援してます。



ちなみに、レコード業界ってのは和服よりは幾分は気が楽かなと思います。

商品点数が多すぎることもあって、利益確保と質重視とで分けることが容易なので。
売れてるから入荷しておくってのはどこの小売りでもあると思うし、
また、音楽物販の経験を生かして他の分野にシフトすることも、
まぁトップの指導力と資金に依るけど不可能ではないと思います。

全然簡単ではないですけどね。