『Number』はやっぱり凄いぞ

前号664号『黄金世代』に対して、
幼稚なバズワードでライターを縛る悪企画である、
今までにこんな最低な『Number』は読んだことがない、
というようなことを書いたのだけど、
批判を書いたからには、良い本は良い本だと認めたい。

今号、665号『ファイターズ 夢の結実。』を読んでみて、
ああ、やはり、『Number』は凄い、と思った。


『Number』の財産は、ライターだと思う。
もし僕が、スポーツ・ライターだとしたら、
『Number』という雑誌は、
科学者における『Science』と同じような位置づけになるんじゃないだろうか。
(もちろん、博士号も関係なければ、日本国内のことではあるが)

でもって、日本ハムの何が凄かったのか/格好良かったのかを、
それぞれのライターが描き出している。
稲葉篤紀(石田雄太)では、ヤクルト時代が思い出せないくらい明るくなった?稲葉が見えるし、
トレイ・ヒルマン vs.落合博満(阿部珠樹)なんかも、
やっぱりシリーズの見所の1つでもある、
監督同士の鍔迫り合い、1ミリを埋めていくような駆け引きを、
場合によっては一気にメートル単位で埋まる様な状況も含めて、
きちんと描き出していて。


なにより、全編を通して、
・新庄剛志を前面には押し出していない
・しかし、あらゆる場所に新庄剛志への思いを滲ませている
・『結果論ではなく』という言葉できちんと区切った上で、勝敗の分かれ目に論拠を与えている
という色合いが透けて見え、
日本シリーズというもの、そのものへの意識が高いなぁと感じた。

本当のことを言えばね。
新庄のインタビューとか読んでみたかった。
新庄と森本の対談とか、
新庄とイチローの対談とか。

まぁでも、
(『Number』は新庄と仲が良いかは分からないけども)
新庄のインタビューは、本屋で隣に置いてあった、どこかの特集号でじっくり読んだ。
なかなか良いインタビューだった。
ライターは見てないけど、メディアとしては、『Number』でなくとも、
ここまでのインタビューは出来るってことだ。素材として。

なら、別に『Number』でする必要はない、と。

敢えて、そこに直接触れることはせずに、
阿部珠樹の手によるドキュメンタリに抑えておいて、
その周りを丹念に描き出すことによって、
必然的に浮かび上がってくる新庄の姿というのがあるだろう、と。

確かに。

そんなことを感じましたね。



新庄については、正直、阪神時代はあんまり好きではなかったな。
大して実力もないのに、ヘラヘラしやがってと思ってました。

でも、米国に行って変わったかなー
メジャーで、ホームベースに手で触ってホームインして、
『ピッチャーに対する侮辱だ!』『報復する!』
なんて言われたり。
えらい勝負強かったり。
守備で高い評価を受けたり。
二軍に落とされたり、怪我に泣いたり。

こうなんていうかね、毒気が抜けたかなぁ。
昔から明るい感じではあったけど、
前向きではなかった気がするんだよな。
結構、批判には敏感な方な気がするしね。
でも、最近は、それはそれとして自分を分かってくれる人のために頑張る、みたいな、
一種割り切ったところがあって。
あーなんか新庄変わったよね、と思ってた。
バカやるだけじゃないってね。


『Number』で、江夏が、新庄のチームプレイを褒めて、
『彼は結構考えて野球をしている』みたいなことを書いていて。
江夏が評価していることへの驚きと感慨と共に、
そうそう、阪神時代はどっちかって言うと振り回してたよなとも。
なんか、そういう選手を求める時代だったんだよな…

三振数、打率こそ阪神時代とさして変わっていないけど、
阪神時代が、1試合当たり0.75であるのに対して、日ハム時代は0.55で、
大幅に減ってることが分かるし。
(とはいえ、出塁率はそれほど上がってないんだけどね)


ああ、『Number』から離れてしまった。

とにかく、今号の『Number』は、良い。
新庄のインタビューこそ無いものの、
プロ野球と言う視点で見たときの、日ハム/中日がよく見える。
もちろんその他のコラムも満載。

素晴らしい。


もしかして、隔号で編集部が違うとか?
まぁそれはあり得るかもなぁ。


次号、よろしく。